【Dior】映画「ディオールと私」を観て「自分という庭に頑丈な花を咲かそう」と思った話

こんにちは、自問自答ファッション通信あきやです👗

今回は2014年に公開された映画「ディオールと私(Dior &I)」を観て感動したお話と、ファッションスタイリストとしてどんな人にディオールのお洋服をすすめていきたいか考えてみました。

「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展」を見に行って、その感動を改めて感じたい!という方にもおすすめの映画です🎥

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「ディオールと私(Dior &I)」は創立者のムッシュ・ディオールさんの話ではなく、2012年にアーティスティック・ディレクター就任したデザイナーラフ・シモンズさんの奮闘記。とてつもないプレッシャーの中で初のオートクチュール・コレクションを発表するまでのドキュメンタリー映画です。予告だけでも面白いのでぜひ↓Amazonビデオはこちらから

主役はもちろん天才デザイナーラフ・シモンズさんですが、お針子さん一人ひとりにきちんと焦点を当ててプロフェッショナルとして紹介していて、とてもいい作品でした。

見終わった後は、ボロボロに泣いてしまいました。美しい服が何人もの手によって仕立てられていく様を見て、ファッションの偉大さに再度気付かされたのです。

アトリエで作られたドレスは実際の制作期間である「6週間」でできた訳ではなく、何十年もアトリエと職人たちによって引き継がれた「途方もなく大きな時間」をかけて作られているのだなぁと実感しました。

ひと雫、ひと雫と改良が重ねられて大きな愛情と共にファッションが出来上がっていく様子は圧巻でした。

 

👗この映画の主役はお針子さんたち

映画の中で私が一番驚いたのは、アトリエのお針子さんたちが「好き」「自分が作りたい」と感じたドレスを自ら選んでいくところです。机に並べられたデザインスケッチを見て、ひとりひとりが作りたいものを手に取っていきます。

「決められた作業が分配されるのではなく、作りたい服を自分で選んでいいんだ👀」というのが驚きでした。職人さんに主体性と個性があって、仲間を信頼しあっているんだなぁと感じることができました。(ディオールのアトリエでは「情熱を感じる服を選べばいい仕事ができるはず!」という信念のもと、ずっとその手法で担当者を決めているそうです。)

トワレを組んでいる様子は、まさに「魔法」。繊細なピンワークで布がどんどん立体になる美しさに、何度も何度も動画を止めて拝んでしまいました🙏

実際に自分が作成したドレスをモデルさんが着ているのを見て
「美しくて涙が出そうだ」
「作業が終わると寂しい、まるで愛おしい我が子と別れる気分よ」
というお針子さんたちの表情がとてもきれいで、溢れる想いが伝わってきてうるうるしてしまいました🥹

中には“小さな頃からディオールで働くと決めていた”と、39年間ずっとアトリエで働き続けている方もいて、誇りを持って働く姿に胸を打たれました。(勤続40年以上のベテランさんもたくさんいらっしゃいました!)

👚お針子さんたちの普段のファッション

お針子さんたち(なまざまな年代の男女)のファッションもとてもリアルでよかったです…!

・基本は「Dior」という刺繍が胸についた白衣
・ヘアスタイルとメイクは最小限
・靴とアクセサリーは本気!
・ハイヒールとかルブタンとか普通に履きながらミシンを踏んでいる!
・シルバーの大きな指輪をたくさんしている!

皆さんの私服が「生きた人間の制服」という感じがして見るのがとても楽しかったです。個性的で自分があって、イキイキした服。身に纏っているアクセサリーの一つ一つにもエピソードがあるんだろうなぁと思いました。「雇われて働いている」というよりは「服が大好きで、美しいものが大好きで、作りたくて作っている」という気持ちがお針子さんの私服から伝わってきました。

🪡映画に出てくるディオールのキーワード

引用:フレデリック・チェン, 2014, 『ディオールと私』, アルシネテラン/オープンセサミ 

👗ディオールを着ることは「自分という庭に頑丈な花を咲かせられる」

創立者のムッシュ・ディオールさんが心から愛したモチーフは「花」でした。彼自身、植物が大好きな園芸少年だったそうです。コレクションも自然と植物と花々への愛をファッションに投影させたものが多く見られます。

そして今回の映画でポイントとなっていたのも、豊かな花々でした。会場には一面に花が咲き誇り、ドレスにもひと針ひと針命を与えられた花が咲き、モデルさんたちも野性の花のようにエネルギッシュにランウェイを歩いていました。

私が今まで見たファッション映画の感想では、
・マックイーンを着ることは「自分の鎧」になる
・マルジェラを着ることは「謎を謎のまま」にできる

と少し不穏なワードが続きましたが、今回の映画では

・ディオールを着ることは「自分の心に頑丈な花を咲かせる」こと
という明るく力強いテーマを感じました。

ディオールを身に纏うことで艶やかな花も、厳かな花も、麗しい花も「自分という庭」に咲かせることができます。そしてその花は儚く散りゆく花ではなく、アトリエがある限り何年も何年も咲き続けることができる頑丈なお花です💪

🍰おまけ🍰

私たちの購買はこの伝統と芸術と未来を支えている

改めて「アトリエ」「クリエイティブ・ディレクター(アーティスティック・ディレクター)」の関係について考え直した映画でした。「Dior」の伝統を支えるためにはアトリエを維持し続けることが重要で、それを支えるには顧客の購買による収益が必要で、利益がないと伝統は絶えてしまう。

しかし、新しいものを発表し続けないと顧客は離れ、ブランドの存続はない。だから「とんでもなく新しいこと」を起こすためにクリエイティブ・ディレクターの存在が必要不可欠なんだな……と感じました。

ディオールのバッグや靴やアクセサリーを買うことは確かに「このアトリエと、職人さんたち」を支えることに繋がります。

昔の話になりますが、私は20歳の時に「パタンナー」になるための資格を取得しました。大学の学費とは別に、バイト代を注ぎ込んで講習に通いました💪

真夏に汗ダラダラで、ずっと鉛筆でシーチング(布)に線を引いて、アイロンを地の目に沿ってかけ、細断し、細いピンでトルソーに着せつけて、型紙を作る訓練をしていました。今思うと、細かい作業にずっとピントが合わなくて、弱視の私には辛い辛い作業でした。

なぜ目がよく見えないのに意地でこの資格を取得したかというと、ファッションデザイナーの夢を諦め、それでもまだファッションを「作る」というところにしがみついていたからです。まだ何かできるのではないかと模索していました。糊が効いたシーチングの香り、先生がとても厳しかったこと、袖がどうしてもふわっと付けられなくて何度も何度も練習したこと、今でも昨日のことのように覚えています。

上手くはできなかったけど、それでも針が布にスッと入る瞬間はとても気持ちがいいものでした。初めて一人でトルソーにジャケットの型紙を着せられた時は、もったいなくて、型紙を外したくなくて寂しい気持ちになったものでした。

自分でも「目がよく見えないし適性がないな(そりゃそうだ)👀」と感じてパタンナーの道には進みませんでしたが、チャレンジしてみたという経験は宝物です。

Diorのアトリエで、職人さんたちによって生み出されたドレスたちは、それはもう美しくて、涙が溢れました。一度でも服を作ったことがある人なら、ずっと祈るような姿勢で見入ってしまう映像だと思います。

私はほんの小さなものを買うことしかできませんが、それでもDiorの商品を手にとるときは、あのアトリエ生きる方々の、そして受け継がれる伝統の支えになればという願いを抱いています。世界中のファッションを愛する人の心に頑丈な花が咲きますように🌸
映画「ディオールと私」ぜひお時間がある時に観てみてください☺️

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