ファッショニスタに叱られた話

こんにちは
自問自答ファッション通信です。

先日、「ファッションの神」にお会いしたので書き残しておこうと思います。(少しフェイク入れてます。)

新宿のパン屋さんに並んでいた時の話です。その日はとても寒く、街の人々はみんな暗い色のダウンコートを着ていました。

そんな中、私が並んだ列の目の前にものすごいファッショニスタ(女性・40代後半くらい)がいらっしゃいました。小柄で細い体型、眉毛は全剃りで、眉毛の形にピンク色の線が引いてあります。ベースメイク無し、掟ポルシェさんのようなシルバーのアイライン、まつ毛にはカラフルなエクステンション。

ピンク色やグリーンやゴールドの髪にターバンをぐるぐる巻きにしてピアスはポンデリングのような大きなモチーフ、毛皮のコートにヴィトンのビンテージバッグ、メゾンマルジェラの足袋バレリーナ。奇抜な服装ですが、まとまっていて本当におしゃれでした。

私は面白い人方が大好きです。あまりのルックスのインパクトに思わず声をかけてしまいました。
以下の会話は、私→私、ファッショニスタ→フ で話します。

私「かわいいバッグですね」
フ「は?何あんた、可愛いって何?何基準?」

一瞬で私は気が付きました。「あ、やべー奴だ」

私「すみません、バッグが可愛かったので、、失礼いたしました。」(退散気味)
フ「だから!何がどんな基準でかわいいのかって聞いてんのよ!」(真剣な顔)

最初はお酒に酔っているのか、何かやばいトリップをしていらっしゃるのかと思いましたが、すごく落ち着いた目をしていて、話し方も癖がなく(怒ってはいらっしゃいましたが)ディベート好きなおしゃれさんかなと思いました。

顔は般若のように怒りながらも、話したいオーラが全身から出ています。何より面白そうだったので色々聞いてみました。

私「ルイ・ヴィトンのビンテージをオリジナルでアレンジされていて素敵だなと思ったんです。」
フ「甘いわね。ブランド名でものを見る様じゃまだまだよ。」
私「おっしゃる通りですね、何かファッションでこだわりがあるのですか?」
フ「こだわり?あなたね、主語がないわよ。ファッションというジャンルは宇宙よりも広く、海よりも深いの。あなたが私に聞いているのは、服?靴?アクセサリー?食もそうだし、食器、インテリア、旅行もファッションよ。ひどく中途半端な質問を私にしないでくれる?」
私「失礼いたしました。では…アクセサリーで何かこだわりはあるのですか?」
フ「すべてよ。すべて。」
私「すべてですか?生きとし生けるものすべてということですか?」
フ「そうすべて。道に落ちているゴミから100円ショップから、しまむらやGUから、ハイブランドまですべてよ。」
私「御見逸れしました。なるほど、すべてですね。…特に好きなデザイナーはいないのですか?」
フ「デザイナー?あなたね、その言葉意味をわかって言っているの?道端に朽ちている木の棒にだって自然というデザインがあるのよ、どのレベルで話をしているの?」
私「…そうですよね。あの、特に好きな人物でのアクセサリーデザイナーはいらっしゃるのかな、と。」
フ「すべてよ。すべての人物よ。」

私心の声「やべー禅問答や…」

私「そうですか、勉強になりました。」
フ「あなたね、ファッション業界でしょう?」
私「はい、そうです。わかりますか?」
フ「わかるわよ。ファッションがわからないような人は私を恐れて話しかけて来ないもの。」
私「そうですか、もうなんと言うか、すべてがファッションなのですね。」
フ「そうよ。生き方すべてがファッションよ。ファッションに興味がない人が私に話しかけてくるはずはないから、あなたはファッションの人よ。あなたも私と同じよ。」
私「いえ、本当に、滅相もございません。ありがとうございます。」
フ カヌレを買いながら「せっかく生きてるんだから、本当の意味での服を着なさい」
私「意味を持った服ということですか?」
フ「そう、すべてのものに意味があるの。それに気がつかず生きているような人間にはならないことね。」
カヌレを齧りながら去っていくファッショニスタ。財布はシャネルのマトラッセであった。

パン屋「何か怒られてませんでした?大丈夫ですか?」
私「はい、大丈夫です。食パンください。6枚切りの3枚入りを。」
パン屋「あの方お得意様なのですが、いつもおかしなことを言うので私たちも戸惑っているのです。」
私「ほう、おかしなこと、例えば?」
パン屋「そんなパン屋の制服で生きていて恥ずかしくないのかって」
私「おお、それは、困りますね。」
パン屋「私たちはパン屋ですから。パン屋は、パン屋ですから」
私「パン屋の制服にも意味はあるのにね」
パン屋「そう、私、いつも嫌な顔してしまうのです。今回はお客様がお話してくれたので、こちらには何も言われずよかったのですが、お客様には、すみませんでした。」
私「いえいえ、面白かったです。」

私は帰り道に深く考えました。

あの方は何をなさっている方なんだろう。デザイナーやアーティスト、雑誌の編集者、アパレルショップ経営者なのか。

しかし、どれも違う気がしました。

そう、彼女に聞いたら笑われるでしょう「職業なんかのレッテルで私を語ろうとするの?甘いわね。」と。

ファッション業界で長く仕事をしていると3年に一度くらい「研ぎ澄まされた確固たる想いを持った仙人のようなファッショニスタ」に出会えます。

今回の出会いは、ファッションという概念が私に遣わした神だったのか。私がまだ達していない境地を見せるための幻想だったのではないでしょうか。

スタイリストとして、いつかあの方と肩を並べてお話ができる時が来るまで精進あるのみです。

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